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概要

shimotsukebook

あるところに狭い領土ながら善政を敷き、民を思う殿さまがいた。城の名は高岡城。その殿さまの名は「高たか岡おか甚じん之の丞じょう」殿さま三十歳の秋、取り入れが済んだころこの国に遠国より敵が攻め入った。その数およそ八千。こちらの五倍の兵力である。敵は何より鉄砲部隊を率いていた。これが一番の脅威である。城内はにわかに騒然となり直ちに軍議が開かれる。武将たちが集まり板場にビダグラをかいた。「籠城か打って出るか……」若い殿さまは考えた。籠城して城とその兵を守っても、それは本質的な解決にはならぬ。問題の先送りに過ぎぬ。その後、状況が好転するとは限らない。そもそも籠城とは外部に味方がいて、援軍が期待できてこそ可能な策。外部に友軍がいなければいつかは滅び行く。「鉄砲の欠点は何か?」板場に武将たちを集めて問うた。すると軍師がしこばって応えた。「はっ、雨にござりまする」「その他は?」「はっ……闇にござりまする」「ふむ……」それから三日後、鉄砲の欠点である夜を狙って行動を開始した。わずかな勢力で闇の中を密かに行軍し、敵本陣でなく米の庫と水の手にしぼって急襲した。食糧庫を蹴散らし、あっという間の攻撃であった。敵には八千の兵という驕おごりと、夜襲であったためか油断があり、また闇の中で鉄砲は使えない。高岡の殿さまは、この精鋭を城に戻さず南西の方角にある〝鉢の木山?の砦に入れ、多くの幟を準備させた。さらに城から尾根づたいに回り込んだような地形の岩場に二十人ほどの兵を移動させた。こうして夜が明けて敵の米不足が鮮明となる。「猶予はない。敵は来るぞ!」殿さまの頭には〈いかに大軍であろうと敵の不安心理を煽り、各個に分断させて引き伸ばし、それぞれに第二十九話「名将の采配」シリーズ●方言コラム文嶋均三イラスト昭るり●66