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概要

shimotsukebook

今日も鯨は姿を見せなかったが、二人はいつまでも海を眺めていた。[見どころ]冒頭のシーン、セピアタッチの画面。静かな海、丘の上に一軒の別荘が建っている。二階の窓から身を乗り出している少女セーラ。テラスで本を読んでいる少女リビー。そこへ友達のティシャが来て、「リビー来たわよ、見えたわ、セーラ!、来たわ」と二人に話しかける。何を見たかは作品をご覧いただくとして、再び静かな海のシーン。画面がカラーに。そして五十年以上が経って……。その間、姉妹に何があったのであろうか。なんと言っても本作最大の見どころは、リリアン・ギッシュとベティ・ディヴィスが共演している作品であることであろう。映画ファンなら二人の名前はお聞きになったことがあると思いますが念のため。L・ギッシュはサイレント映画時代の大スター。女優であった母が、彼女が五歳の時に妹と初舞台を踏ませ、その後映画の父と呼ばれるD・W・グリフィスに見出され、母と妹と共に映画デビュー(1912年)。その後「イントレランス」(1916)「散りゆく花」(1919)等数々の作品に主演。30年代にブロードウェーで「椿姫」「ハムレット」などに出演して活躍した後、1942年映画界へ復帰した。一方、B・ディヴィスは、1930年代から40年代にかけて活躍したハリウッド黄金時代の輝かしい女優である。筆者にとっては晩年、「何がジェーンに起こったか」という怪奇映画での大きな目の怖いおばさんぐらいにしか写っていなかったが、本作で改めて素晴らしい女優であったことを認識させてくれた俳優であった。その二人が海辺の一軒家に住む老姉妹の生活を淡々と描いた本作は、舞台劇を観ているような感じのする作品である。それもそのはず、元々デヴィッド・ペリーの舞台劇の映画化作品(脚本を担当)であるからだ。そして興味あるのは、姉役を若いディヴス(といっても撮影当時79歳)が、妹役をギッシュ(撮影当時90歳)を演じているということである。他の俳優も70歳代の高齢者。映画の中に俳優自身の人生が重なって見えてくる。二人が姉妹の性格の違いなどを見事に演じており、海の波のように人生も変化する、老いを迎えた姉妹のこれまでの人生が目に浮かぶようで、ラストでは思わず泣いてしまう。監督のリンゼイ・アンダーソンは、「ifもしも……」で1969年カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞した。本作撮影時64歳。是非ご覧いただきたい一本である。「八月の鯨」は、十二月末日から宇都宮市内のヒカリ座にて上映が予定されています。なかなか見る機会のない作品ですので、是非ご覧下さい。詳細は劇場にお問い合わせ下さい。宇都宮ヒカリ座TEL028│633│4445※[参考資料]岩波ホール公開時のパンフレット小室明男Akio Komuro行政書士。版画専門ギャラリー「はなみち」店主。うつのみや映画友の会代表。「宇都宮落語会」世話人(副会長)。栃木放送ふるさとレポーター。映画、落語、歌舞伎、ラテン音楽、美術などをテーマに講演活動「道楽オヤジ倶楽部」。第16回NHK関東甲信越地域放送文化賞受賞。71